税理士法人小林・丸&パートナーズの河西です。小規模企業の経営者や役員、個人事業主などの積立による退職金制度が小規模企業共済です。今回はこの小規模企業共済にデメリットはあるのか、メリットとともに紹介します。
目次
小規模企業共済とは?
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主の方などが、廃業や退職後の生活資金などのために積み立てる退職金制度となっています。
積み立てた金額に応じて将来共済金を受け取ることができ、全額所得控除を受けることが出来ます。
小規模企業共済のメリット
掛金を全額所得控除にできる
小規模企業共済は月々の掛け金を「小規模企業共済等掛金控除」として全額所得控除が出来ます。
節税対策となり、大きなメリットとなります。
退職金の代わりとして積み立てることができる
小規模企業共済は、掛金を6か月以上支払った場合解約金を受け取ることが出来ます。
個人事業主や経営者の場合、廃業したり退任したりしても退職金を受け取れるわけではないため、小規模企業共済を活用して節税をしながら将来設計に役立てることが出来ます。
低金利の貸付制度を使うことができる
共済契約者には、事業資金等を借りることが出来る一般貸付と特別な事情の時に借りることができる特別貸付の制度があります。
一般貸付の場合は年利1.5%で借りることができ、特別貸付の場合は0.9%で借りられる場合が多いです。(令和6年6月調べ)
受取時に給与ではなく退職金または雑所得として受け取ることが可能
受取時には給与に単純加算されるのではなく、退職所得または雑所得として受け取ることが可能です。退職所得の場合、(退職金-退職所得控除額)×1/2 = 退職所得の金額
となります。任意解約の場合は、年齢が65歳以上であれば退職所得扱いとなりますが、65歳未満の場合は、一時所得扱いとなるため、注意が必要です。
雑所得の場合でも公的年金等の雑所得扱いになるため、公的年金等控除額を差し引くことが出来ます。
小規模企業共済のデメリット
12か月未満の短期で解約した場合は掛け捨てになる場合がある
準共済金や解約手当金としてもらう場合は、12か月未満の場合は共済金が受け取れません。
準共済金は個人事業を法人成りした結果加入資格がなくなった場合
解約手当金は、任意解約した場合や掛金を12か月以上滞納した場合による機構解約、個人事業を法人成りした結果、加入資格はなくならなかったが、解約した場合などが該当します。
また、個人事業を廃業した場合や、個人事業の共済契約者の方が亡くなった場合は共済金Aに該当し、会社等役員の場合は、疾病・負傷により役員を退任した場合や、65歳以上で役員を退任した場合、共済契約者の方が亡くなられた場合は共済金Bに該当します。この場合は掛金が6か月以上納付していれば共済金を受け取れます。
元本割れのリスクがある
廃業したり、65歳以上で180か月以上払い込んだ場合や、共済金AやBに該当するような場合はいいですが、任意解約の場合は、掛金納付期間が20年未満の場合は、元本割れとなります。
掛金納付年数:15年 | 掛金合計額:1,800,000円 |
共済金A | 2,011,000円 |
共済金B | 1,940,400円 |
準共済金 | 1,800,000円 |
任意解約 | 1,665,000円 |
小規模企業共済の加入資格
小規模企業共済の加入資格は、小規模企業の経営者や個人事業主の方などとなっていますが、どんな方が加入できるのでしょうか。
個人事業主の場合
個人事業主の場合は、法人を設立せずに、自ら事業を行っている個人をいいます。
個人事業主の例
https://kyosai-web.smrj.go.jp/skyosai/entry/index_02.html
- 個人で建設・製造業、卸売・小売業などを営んでいる方
- 理容・美容室などのサービス業を個人経営している方
- 個人タクシーや、その他の運送業を個人で営んでいる方
- 個人で農業を営んでいる方
- 法人化していない個人医院、弁護士・税理士などの士業の方
法人の会社等役員の場合
法人の会社等役員の場合は
加入資格 | 小規模企業共済 (smrj.go.jp)
- 株式会社、有限会社、特例有限会社の取締役または監査役の方。
- 合名会社、合資会社の業務執行社員の方(業務執行社員を定款で定めた場合、その定められた社員)。
- 「業務執行社員」として登記されている合同会社の社員。
- 企業組合、協業組合の理事または監事の方。
- 農業の経営(営利目的)を主として行う農事組合法人の理事または監事の方(非営利を主とするものを除く)。
- 士業法人の業務執行社員の方。
加入できない場合
・事業を兼業している給与所得者
・役員とみなされる場合でも、登記されていない場合
・中退共等の被共済者の場合
・直接営利を目的としない法人の役員等の場合(医療法人、協同組合、学校法人など)
上記は一例ですが加入できない場合となります。
中退共等の被共済者の場合はだめですが、商工会、商工会議所で行っている特退共の場合は加入要件を満たせば加入することが可能です。(中小機構共済FAQ (smrj.go.jp)小機構共済FAQ (smrj.go.jp)ただし特退共も個人事業主や役員は加入の対象からはずれるため、ほとんどの方は併用はできないでしょう。
まとめ
小規模企業共済は掛け捨てのリスクや、20年以上加入しないといけないなどのデメリットもありますが、節税のメリットがあり、退職金として貯めておくこともできるためとても有効です。
加入する際は、税理士等に相談して検討するようにしましょう。