浜松市中央区にある会計事務所の税理士法人小林・丸&パートナーズの河西です。
中小企業の投資促進税制をご存じでしょうか。法人税や所得税には、機械装置を取得した際に一定の金額を経費にできたり、税額を減少させたりできる「投資促進税制」という特例があります。今回は、その中でも中小企業の投資促進税制について解説いたします。
目次
中小企業投資促進税制とは
青色申告書を提出する中小企業者などが平成10年6月1日から令和7年3月31日までの期間(以下「指定期間」といいます。)内に新品の機械および装置などを取得しまたは製作して国内にある製造業、建設業などの指定事業の用に供した場合に、その指定事業の用に供した日を含む事業年度において、特別償却または税額控除を認めるものです。
No.5433 中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)|国税庁 (nta.go.jp)
中小企業投資促進税制は、上記のように新品の機械や装置などを取得し、事業の用に供した場合に特別償却もしくは税額控除が出来るという仕組みです。
当初は令和3年3月31日までの適用でしたが、令和7年3月31日まで延長されました。
適用対象者は?
この制度は青色申告法人であり、
- 中小企業者等(資本金額1億円以下の法人、農業協同組合、商店街振興組合等)
- 従業員数1,000人以下の個人事業主
以上が対象となっています。
対象設備は?
tyuusyoukigyoutousisokusinzeisei_summary.pdf (meti.go.jp)
- 機械及び装置【1台160万円以上】
- 測定工具及び検査工具【1台120万以上、1台30万円以上かつ複数合計120万円以上】
- 一定のソフトウェア【一のソフトウェアが70万円以上、複数合計70万円以上】※複写して販売するための原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く
- 貨物自動車(車両総重量3.5トン以上)
- 内航船舶(取得価格の75%が対象)
以前は電子計算機も対象になっていたのですが、平成29年度の税制改正によって、器具及び備品(一定の電子計算機、デジタル複合機、試験又は測定機器)は対象外になりました。
また、中古品や貸付の用に供する設備等は原則として対象外となっています。
さらに、令和5年度改正による変更で、コインランドリー業(主要な事
業であるものを除く。)の用に供する機械装置でその管理のおおむね全部を他の者に委託するものは対象外となりました。
ちょっとわかりづらいですが、コインランドリー業のすべてが対象外となったわけではなく、
・自社でコインランドリーを運営している
・店舗の管理運営を事業者でも行っている(一部の管理を任せているのみなど)
の場合は、特例を使うことが出来ます。
特別償却と税額控除はどのように選択をしたらよい?
この制度を活用すると30%の特別償却もしくは、7%の税額控除を活用することが出来ます。
特別償却とは?
特別償却とは、本来であれば、固定資産の耐用年数に応じて毎期減価償却費として費用を計上するものを、特別償却を使用すると前倒しで経費計上することができる制度です。
たとえば1,000万円の機械装置を購入した場合、300万円を初年度に経費として計上することができます。ただし、前倒しで経費計上はできますが、総額の経費は変わらないため、全体の経費が増えるわけではありません。また、資本金が3,000万円を超える中小企業の場合、特別償却のみが選択肢となります。
特別償却のメリット
特別償却のメリットとして、経費を計上した年度は利益を減少させることができ、その年度の税額を抑え、資金に余裕を持たせることができます。
たとえば、1,000万円の機械装置を購入し事業用に供した場合、耐用年数が10年で定率法を用いると、初年度に200万円、次年度に160万円という形で償却していきます。しかし、特別償却を適用した場合、初年度にプラス300万円を経費として計上することができます。
特別償却のデメリット
デメリットとしては、会計処理が複雑になること、また購入し使用を開始した年度しか適用できないという点です。
税額控除とは?
税額控除とは、課税所得金額に税率を乗じて算出した所得税額から、一定の金額を控除するものです。
No.1200 税額控除|国税庁 (nta.go.jp)
税額控除とは、課税所得から算出された税額から、一定の金額を控除することができる制度です。
たとえば、1,000万円の機械装置を取得し、今回の法人税額が100万円であった場合、1,000万×7%の70万円が税額控除限度額となります。ただし、税額控除限度額が法人税額の20%相当額を超える場合、その部分は控除できませんが、控除しきれなかった金額は繰越税額控除限度超過額となり、1年間繰越が認められます。
今回の場合、100万円×20% = 20万円となりますので、今期の税額控除額は20万円となりますが、残りの50万円が繰越税額控除限度超過額となり、翌年に繰越することができます。
税額控除のメリットは?
税額控除を利用することで、取得した年度の税額が少なくなり、長期的に見ると節税効果が高くなります。また、引ききれなかった分は次年度に繰越が可能なため、もし本年度が赤字であっても、次年度に大きく黒字が出る場合は、繰越を利用して控除することができます。さらに、特別償却と比較して、通常の減価償却費も経費として計上できるため、総額の節税効果が高くなります。
税額控除を活用することで、企業は資金に余裕を持たせ、投資や事業拡大に充てることができるため、競争力を強化する一助となります。特に成長を目指す企業にとって、この制度は大きなメリットとなるでしょう。
税額控除のデメリットは?
多額の欠損金があるなどして利益が出ていない場合、税額控除は適用できません。また、次年度が黒字であっても、繰越欠損金が多額の場合は、控除しきれなくなる可能性があります。短期的にみると特別償却の方が節税効果が高いため、資金繰りが厳しい場合にはデメリットとなります。
さらに、税額控除の申請手続きが複雑であるため、時間と労力がかかる点も考慮すべきです。
どちらを選んだらいい?
特別償却が有利なケース
- 翌期以降も赤字が続く場合。
- 当期の納税額を少なくしたい場合
- 資金繰りが厳しい場合
特別償却を選択することで、今後も赤字が続いたり、資金繰りが厳しい場合には、繰越欠損金として処理することができます。また、今期の納税額を減らすことで、さらに設備投資を行う資金を確保することができます。このように、特別償却は短期的な資金繰りに有利な方法として活用できるでしょう。
税額控除が有利なケース
- 翌期以降も黒字が続く場合
- 資金繰りに問題がない場合
- 決算の利益を落としたくはない場合
翌期以降も黒字が続き、資金繰りに問題がない場合、税額控除を選択することで、長期的に見て税額が減少します。この方法は、決算の利益を維持しながら節税効果を得るために有効です。
まとめ
中小企業の投資促進税制についてまとめました。特別償却、税額控除ともにメリットとデメリットがありますが、どちらを選択するかは、企業の経営者の判断でわかれるところでもあります。
その時の状況や、今後の展望などを考慮した上で、どちらにするか選択しましょう。
適用できるかどうかや選択に悩んだら
適用できるのかどうかや選択に悩んだら、税理士に相談してみましょう。
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初回相談無料で行っておりますので、お気軽にご相談ください。